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週の真ん中水曜日。いつもとは違う夕方17時。冷たい雨が空から降り注いたが、福岡県のある2箇所に集まった人々だけは、ピッチ上で繰り広げられる熱戦によって、身体の体温が上昇していった。

10月中旬から始まった『2019年度 第98回 全国高校サッカー選手権大会 福岡大会 二次予選』も、残るは準決勝、決勝を残すのみとなった。
シード校として、準決勝が初戦となる王者東福岡高等学校。
奪還を掲げ、古豪復活を目指す東海大学付属福岡高等学校。
インターハイ予選準優勝校の、九州国際大学付属高等学校。
そして、前年度準優勝校の筑陽学園高等学校。
顔ぶれだけ見れば、例年とさほど変わらないが、ここまでの道のりは決して容易ではなく、様々な苦難を乗り越えて、この舞台に上がって来た。
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準決勝はレベルファイブスタジアムと本城陸上競技場の2箇所に分かれ、同時刻にキックオフされた為、私は筑陽学園高等学校(以下、筑陽)対九州国際大学付属高等学校(以下、九国)の試合が行われる、本城陸上競技場に向かった。
そこで繰り広げられた試合は、春先から好調を維持し、プリンスリーグでも上位に着け、優勝校筆頭にも目されていたチームに対し、夏にどん底まで叩き落とされながらも、固い結束力と、プライドを取り戻したチームが、劇的なゴールで延長戦を制し、3年連続決勝戦進出を決めた。

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筑陽学園高等学校 スタメン
GK 1 野中 友椰(C)
DF 2 今田 光 4 吉村 颯真 18 岡 宗万 
MF 6 古賀 健琉 7 古賀 敬仁 14 栗尾 瑠  19 藤 隆成
FW 9 過能 工太郎 10 寺岡 聖斗 12 岩﨑 巧

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九州国際大学付属高等学校 スタメン
GK 12 木下 魁人
DF 2 稗田 凌太(C)3 宮本 武 4 吉田 晃 5 花田 周勇 
MF 6 阿比留 将栄 7 尾木 滉 8 高月 海 14 森永 将斗  
FW 9 吉田 直樹 11 坂下 快

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両チームのスターティングイレブンは、約三週間前に行われた3回戦と同じメンバー。 直近のリーグ戦からも九国は変えず、筑陽は2人の選手を入れ替えて来た。
前半は九国ペースで試合が進む。ボールが滑るピッチを利用し、前線の3選手のスピードを活かし、筑陽ゴールに襲い掛かる。
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9分、14番森永選手のスルーパスに反応した9番吉田選手がシュートまで持って行くが、筑陽もしっかりブロック。14分にも、森永選手からのラストパスに反応した9番吉田選手が、ペナルティーエリア内まで侵入するが、筑陽の2番今田選手が体を張ってブロックし、チームのピンチを救う。
しっかり九国の攻撃には最後まで対応し、決定機までは作らせてないものの、なかなかボールを保持する事が出来ず、攻撃の形が作れない筑陽。
25分には、12番岩﨑選手が遠目からファーストシュートを放つも、記録上筑陽の前半のシュートはゼロだった。
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押し込みながらも、ゴールを奪う事が出来ない九国。30分には、左のスローイングから、3番宮本選手がゴール前にクロスを上げるが、森永選手が飛び込むも、筑陽の守護神野中選手のパンチングに防がれ、その流れで掴んだ左コーナーキックのチャンスも、最後は11番坂下選手がヘディングシュートを狙うが、惜しくも右に外れてしまう。
前半は、九国ペースで試合が進んでいる様に見えたが、筑陽が主導権を握っている様な、不思議な感覚の前半40分は両チーム無得点のまま、あっという間に終了して行った。 
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両チームのメンバー変更は無く始まった後半も、攻める九国、守る筑陽で試合が進むものと想像していたが、ピッチ上の状況は一変。
中盤でのルーズボールを、14番栗尾選手がことごとく回収し、前半ボールを触らせてもらえなかった7番古賀選手にボールが渡り、筑陽はリズムの良い攻撃で、九国ゴールに攻め込む。
開始3分、右サイドに展開しゴール前に折り返すと、9番過能選手、10番寺岡選手が飛び込むも、惜しくも合わせられず。6分にも、中盤から19番藤選手が見事なトラップからゴール前に入れるも、九国も必死のクリアで対応し、シュートまで行かせない。
ここから両チーム、球際の激しい攻防で、一進一退繰り広げるが、九国の4番吉田&5番花田両選手。筑陽の4番吉村&18番岡両選手の、両チームの両センターバックが、息のあったコンビネーションで、ことごとく攻撃を跳ね返し続ける、この鉄壁の守備から、ゲームは1点勝負の様相を呈し始める。

リズム良く攻めていた筑陽だったが、17分、思わぬアクシデントが起きてしまう。9番過能選手が負傷し、交代で11番深松選手が交代でピッチに。「お前の為にも勝つから!」と、想いを受け取った仲間からの声を背に、ピッチを後にする過能選手。
変わりに入った深松選手は、これまでの鬱憤を払う様なプレーで、筑陽の攻撃は更に勢いづく。
19分、右サイドからドリブルで仕掛け、中へ折り返すと、こぼれ球を10番寺岡選手がシュートするも、惜しくもゴール上へ。
その1分後にも、深松選手が粘って右コーナーキックのチャンスを作り、その流れで得た左からのコーナーキック。ファーサイドで4番吉村選手が頭で合わせるが、惜しくもシュートは右に。
26分にも、中盤で流れるようなパスワークから、右から深松選手が折り返し、ゴール前7番古賀選手が飛び込むも、一歩及ばず。 
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32分には、カウンターから右サイドに流れていた寺岡選手が折り返すも、九国の3番宮本選手がスライディングでブロック。
後半は九国のシュートを1本に抑え、筑陽が試合を支配していたが、最後の所は厳しく行った九国最終ラインを崩せず。アディショナルタイム3分でも決着がつく事無く、試合は10分ハーフの延長戦へ突入した。

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延長前半、最初に仕掛けたのは九国。開始20秒で左からのスローイングを獲得すると、クリアボールを拾った14番森永選手がシュートを放つも、野中選手が見事なセービングで防ぎ、ゴールを許さない。
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この後の猛攻も凌がれ、状況が打開出来ない九国は6分、9番吉田選手と11番坂下選手に代え、19番西川選手、25番杉本選手を投入。
すると9分、カウンターから14番森永選手からのパスに反応した、25番杉本選手が決定的なチャンスを迎えたに見えたが、筑陽の18番岡選手が間一髪でブロック。今大会、随所でピンチを摘んで来た男が、ここでもチームのピンチを救う。

延長後半、今度は筑陽が決定機を迎える。3分、ゴール前の混戦から、10番寺岡選手が放ったシュートは、コースを捉えていたものの、九国のゴールキーパー木下選手が、ジャンプ一番右手一本で防ぎ、ここ一番で最高のプレーを見せ、気迫のこもったプレーでチームを救ってみせる。

両チームの死闘が続き、このままPK戦も視野に入り始めた、延長後半8分。最後の最後にドラマが待っていた。 
右コーナーキック付近からのクロスは弾き返されるものの、そのルーズボールを筑陽が押し返す。
左ゴールライン、このままラインを割るかと思われたボールに、いち早く、最後まで諦めずに行ったのは12番岩﨑選手。一瞬対応が遅れた、九国の選手のマークを振り払い、ゴール前に折り返すと、途中出場の13番大嶋選手がしっかり流し込み、ついに筑陽が貴重な1点を奪い取る。
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アディショナルタイムに入り、九国は左コーナーキックに、最後の望みを託すが、筑陽にクリアされ、そのままボールはタッチラインを割り、そこで主審のタイムアップのホイッスルが、雨の本城の空に鳴り響く。
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東福岡高等学校と並び、優勝候補とも言われていた、今年の九州国際大学付属高等学校。
タレント豊富な選手と、ベンチにも充実した選手が控える、選手層の厚さ。それでも、決勝にさえ上がれない、福岡県大会の険しい全国への道。
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一方、大会前に調子が上がって来ず、心配された筑陽学園高等学校は、初戦は苦しみながらも、飯塚高等学校、そして九州国際大学付属高等学校との強豪対決を制し、堅守速攻という本来の姿を取り戻しての、見事な決勝進出。
同時刻行われた準決勝で、東海大学付属福岡高等学校を4−0で退け、7年連続の優勝、県代表を狙う東福岡高等学校との、3年連続同じカードになった決勝戦。
キックオフは12月4日水曜日、レベルファイブスタジアムで、16時キックオフされる。
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『2019年度 第98回 全国高校サッカー選手権大会 福岡大会 二次予選組合わせ』
http://fukuoka-fa.com/wp-content/uploads/sites/3/2019/11/2019選手権二次組合せ3.pdf