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『2019年度 第98回 全国高校サッカー選手権大会』。
各地で代表校が決まった中、最後の枠を賭けて決勝戦が行われた福岡県大会。
決勝まで勝ち上がったのは、7連覇を狙う絶対王者の東福岡高等学校(以下、東福岡)。
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そして3度目の正直で、東福岡に決勝で挑む筑陽学園高等学校(以下、筑陽学園)。
準決勝からの戦いとなった東福岡だったが、プレミアリーグとの連戦から、選手のコンディションを気遣いながら戦い続け、決して楽な立場ではなく迎えた決勝。
対する筑陽学園は、飯塚高等学校、九州国際大学付属高等学校と、強豪校との対戦を1−0と、持ち味だった堅守を取り戻し、決勝まで勝ち上がって来た。

今年も、前評判通り東福岡が全国への切符を掴むのか!?
それとも、無風状態が続いていた福岡に、筑陽学園が新たな風を起こすのか!?
最後の代表校の決定に、全国の高校サッカーファンの注目が集まったレベルファイブスタジアムにおいて、定刻通り16時試合はキックオフされた。

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東福岡高等学校 スタメン
GK 14 金森 いぶき 
DF 3 田頭 亮太 4 丸山 海大 5 大串 啓太郎 13 徳永 涼 
MF 6 國府田 駿 7 水野 畝蓮 8 田尻 将太 17 青木 俊輔 18 上田 瑞季  
FW 9 田中 角栄

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筑陽学園高等学校 スタメン
GK 1 野中 友椰(C)
DF 2 今田 光 4 吉村 颯真 18 岡 宗万 
MF 6 古賀 健琉 7 古賀 敬仁 14 栗尾 瑠  19 藤 隆成
FW 9 過能 工太郎 10 寺岡 聖斗 12 岩﨑 巧 

東福岡注目の荒木選手はベンチスタートだったが、準決勝でもゴールも決めた、6番國府田選手がスタメンに。対する筑陽学園は、飯塚高等学校との三回戦から続けて来たスタメンで、この決勝戦も挑む。
今大会2試合続けて、無失点で勝ち上がって来た筑陽学園。
この日も、しっかりブロックを敷き、東福岡の攻撃を待ち受ける。ボールを持てる東福岡は、サイドから攻撃を仕掛けるが、1人を交わしても、直ぐに次のチェックが入る筑陽学園の守備に、バイタルエリアを攻略出来ない。
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8分、強引に左サイドからクロスを上げ、中央の6番國府田選手に合わせようとするも、今大会MVP級のプレーを見せる、18番岡選手がしっかりカバーし、決定機を作らせない。
筑陽学園も17分、9番過能選手が得たフリーキックから、続けて左右のコーナーキックと、セットプレーのチャンスを掴むも、東福岡の4番丸山選手のクリアにもあい、チャンスを活かせず。
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ゴール中央を固められ、思うような攻撃を仕掛けられない東福岡は、23分、18番上田選手がミドルレンジからシュートするも、ゴールマウスは捉えられず上へ。
決勝戦特有の展開で、東福岡は2本、筑陽学園は1本と、シュート数だけ見れば、ゴール前の攻防が少なく感じるが、中盤での主導権争い。サイドでの激しいせめぎ合いと、1点の重みを知る両チームの駆け引きは、最後まで集中が途切れる事無く、前半の40分はあっという間に過ぎ、ハーフタイムを迎えた。
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筑陽学園側から見れば、狙い通りの展開で終えられた前半。それに対し東福岡は、時間経過と共に、ボール回しがブロックの外ばかりになり、攻撃で脅威を与えられず。
後半に入ると、筑陽学園がチャンスと見るや、2番今田選手が果敢なオーバーラップを仕掛け、東福岡守備陣にプレッシャーを掛ける。
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状況を打破したい東福岡は8分、ついにキャプテンの10番荒木選手をピッチに送り込み、勝負に出る。ボールを呼び込める荒木選手が攻撃にリズムを生み、続けてセットプレーのチャンスを作るが、シュートまで持って行けず。
途中出場した24番の遠藤選手が、果敢にサイドから仕掛け、筑陽学園ゴールに迫るも、粘り強い守備で跳ね返し続ける相手の壁に、シュートさえ打てなくなって来た東福岡。
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奮闘を続ける守備陣に応える為にも、何とかゴールを奪いたい筑陽学園の攻撃陣。我慢に我慢を重ねて来た29分、ついに筑陽学園に風が吹き、最高の形、最高のタイミングで、試合の均衡を破るゴールを奪う。 
中盤右サイドでボールを繋ぎ前線に送ると、途中出場の11番、帰って来た筑陽学園のスピードスター深松選手がドリブルで深くえぐり、ゴール前に折り返す。味方に相手マークが引っ張られた所、ノーマークだった9番過能選手。仲間が繋いでくれたボールを、大事に胸でトラップすると、迷い無く振り抜いた右足のシュートは、ゴール左に突き刺さり、優勝を手繰り寄せる、値千金のゴールが生まれる。
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これまで築き、守って来た王者の名に懸けても、このままでは終われない東福岡。
残り時間も10分を切り、15番野口選手、2番モヨ選手を投入し、パワープレーで同点ゴールを奪いに来た東福岡。
37分、右サイドからモヨ選手がゴール前に送ったロングスローも、この日も安定感抜群だった、筑陽学園の守護神野中選手が、渾身のパンチングでボールを弾き返す。
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アディショナルタイムに入っても、決して途切れる事が無かった、筑陽学園の選手達の集中力と結束力。 5分のアディショナルタイムも過ぎ、ついにその瞬間がやって来た。
80分の激闘終了のホイッスルが鳴り響き、大きな歓声がレベルファイブスタジアムを包みこむ。 
筑陽学園高等学校が、悲願の東福岡高等学校を決勝で破っての1−0の勝利で優勝を勝ち取り、11年ぶり3回目の全国大会への出場を決めた。
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新人大会は準優勝で終わったとはいえ、今年も東福岡と福岡県の高校サッカーを引っ張って行くと思われていた筑陽学園。しかし、プリンスリーグでも一向に調子が上がって来ず、インハイ予選では飯塚に苦汁を嘗められ、夏を過ぎても、例年の様な一体感が感じられず、不安な気持ちで筑陽学園の開幕を迎えた本大会だった。少しの時間しか聞けなかったので、コメントは載せなかったが、試合後の囲み取材の場で、決勝ゴールを決めた過能工太郎選手は「練習から本気で意見をぶつけ合い、喧嘩になる事もあった」と話してくれた。
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11年ぶりの出場となる選手権大会は、決して全国での前評判は高くないかも知れない。 
それでも、時間は掛かったが、掛かった分だけ強固になった固い絆。それはピッチに立つ選手、ベンチ入りしたメンバーだけでは無く、スタンドの応援席に回った選手、保護者、スタッフ、筑陽学園に関わる関係者全員で掴んだ今回の優勝。
その固く結ぶれた絆で、全国の舞台でも思い切り、筑陽学園の代名詞でもある、青い稲妻の旋風を巻き起こしてもらいたい。
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準優勝に終わったとは言え、東福岡が福岡の高校サッカーを牽引しているのは事実。
どの高校も「打倒東福岡」を口にし、日々の練習に取り組み、そのライバルの先に進もうと東福岡は進化し続けている。 
来年の新人大会の予選も、すでに始まっている福岡県。
この地で取材出来る事を感謝し、来年以降も福岡のサッカー熱を、全国に発信し続けたい。